夫婦愛その四十四
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他人棒様の唇が重ねられます。
しかも「ディープキス」なのΣ( ̄。 ̄ノ)ノ
第五章 (2)ディープキス
撮影会は終わりです。
カメラを片付けながら
二人に向かって本日の最終計画を伝えます。
「ありがとう」
「撮影は終わりました」
「では、本日の締めに明日の予行演習も兼ねてキスをしましょう」
「それもディープキスを」
少し力を込めて言ったため
命令口調になっていたのかも知れません。
妻とH君が同時に私を見つめます。
特に妻の視線は
微かな非難を込めた射るような眼差しに変わっておりました。
しかしです。
ここでディープキスをすることは
初めての3Pを明日に控えた妻にとって
乗り越えなければならない一つの壁だとも言えるのです。
そこで愛する妻を突き放すように
「明日はもっと凄いことをするんだから今更躊躇はおかしいよ」
もっともらしい理屈を付けて大きく頷きます。
「N美ちゃん、H君の方を向いて」
酔うと、私は妻を「ちゃん付け」で呼ぶ癖があります。
すると妻です。
有無を言わせぬ命令口調に大きく動揺した様子ですが
しかし、酔いに任せてのことではないことも分かっているのでしょう。
しばし見つめ合った後
やがて非難を込めた眼差しを収めたかと思うと
ゆっくりとした動作でH君の方に顔を向け
長い睫毛を静かに閉じました。
待ち構えていたH君の顔が覆いかぶさります。
「ついに!」と言ってもよろしいでしょう。
あの清楚で夫一筋に生きてきた貞淑妻のN美が
生まれて初めて他人棒の唇を受けたのです。
夫以外での初めてのキスに
華奢な身体が震えています。
それを見つめる私です。
妻の震えが乗り移ったかのような
胸の高鳴りが聞こえるほどの興奮の極みにありました。
それでも身体を震わせながら
懸命にH君の唇を受け止めている妻の姿態を認めると
「H君、しっかり抱いてやってくれ」と粘りつく声で頼んでいたのです。
H君です。
その声を待っていたのでしょうか。
華奢な身体を引き寄せ
まるで妻の震えを味わうかのように
しっかりと抱き締めておりました。
・・・自分が夫として正常な心を持ち合わせてさえいれば
情けなくもこの思いを呑み込んだ時でした。
清楚さを強調した花柄のワンピースが
やるせない哀しみの色に染まったように思えてきたのです。
次回もこのキスが続きます。
だって舌を絡めてのキスにならないと、、、。
夫の命令はディープですものね(#^.^#)