廃屋の菜津美(5)
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その視線の先には平伏の貴婦人菜津美がいた。
淫欲の媚びを売っているのだろう。
虫食いの茣蓙に額を擦り付けながら
土下座に乗せた尻が微かに蠢いていた。
蠢く尻を見下ろしながら
男が菜津美の頭に素足を乗せ
軽く力を込めた。
「ご、ご主人様、ありがとうございます」
絞り出すような声で菜津美が謝意を述べる。
「脱ぎなさい」
男が改めて命令を繰り返す。
「はい、喜んでご命令のままに」
「ただ、その前にその前に、ご主人様のお足をいただきとう存じます」
「どうかお許し下さいませ」
踏みつけられて額を茣蓙に擦りつけたままの懇願であった。
しばし沈黙の時が流れていく。
耐えきれなくなったのか
沈黙を破ったのは菜津美であった。
「ぁああぁ、ご主人様、どうかお足を」
「お許し下さいませ」
すすり泣くように許しを乞いながら
踏みつけている足を押し戴くように両手に取った。
そして、涙に濡れた顔を上げ、足先に頬ずりをする。
「ぁああっ、頂戴いたします」
もう止まらぬ菜津美であった。
男の足指に舌を絡めたかと思うと
そのまま足指全てを味わい尽くそうとするかのように
ことさらいやらしく音を立てながら舐め回し始めたのである。
いつの間にか
蝉時雨の喧噪が一段と大きくなっていた。